「明治学園に行くね?」
幼少期の数少ない記憶の中で、
鮮明に覚えている父の言葉だ。
幼稚園年長のいつ頃だったのかはさだかでない。
明治学園が“学校"であるという認識すら
当時の私にはなかったかもしれない。
母は絶句、4つ下の弟は父の言っていること
自体理解できずにポワーンとしていた。
昔と変わらぬ学びの姿勢、
明治学園小・中・高等学校。
地元では「明治」の略称で呼ばれている、創立から100年以上の歴史を誇る伝統校。“質実剛健で有能な人材を育成する”という創立当初の精神は変わることなく現在に受け継がれています。
北九州市外の人も読まれているかもしれないので、念のために説明しておこう。明治学園とは、1910年に創設されたミッション系の私立小・中・高校で、「ごきげんよう」という挨拶がたいへんよく似合う名門である。冷静沈着な父が、たとえ一瞬にしても、なぜ私をそんな由緒正しき学園に入学させようと血迷ったのかはわからない(酔っていたのかもしれん)。ただ、私が返事をする前に、母が「こんなガサツな子に、明治は無理やろ」と言ってケラケラ笑いだし、父も「そりゃそうか」と大笑いしたことは覚えている。私は私で、なんだかよくわからないけれど、明治学園というところは、私のような者が立ち入ることのできない神聖なる場所なんだなということは幼いながらに理解した。そして、その意識はずっと心のどこかに根付いていて、明治学園前の通りを往来するたび、なんともいえない挫折感を味わうことになるのだった。受験もしていないのに。
それにしても、なんと失礼な親に育てられたものだろう。今、あの瞬間にタイムスリップできるものなら、両親の前にでーんと立ちはだかり、小一時間説教してやりたい。「そんなことだから、お宅の娘はあんなふうになってしまったのだ」と。そんなわけで、私は通常通り、市立牧山小学校から高峰中学校に進み、県立戸畑高校へと進学したわけである。
なーんてことを思い出しながら、夜宮公園内の緑の小道を歩いていた。
少し前に、旧松本家住宅(西日本工業倶楽部)で講演をさせていただいた帰り道のことだ。旧松本家住宅といえば、いまやテレビドラマや映画のロケ地としてもひっぱりだこの、国指定重要文化財である。明治時代から各界のVIPをもてなしてきたというアールヌーボーの洋館を出た私が、なんとなく貴婦人気取りの面持ちだったのは言うまでもない(気分だけだから笑って許して)。だってここは、北九州の文化と教育の泉のようなエリアなんだもの。
ご存じの方も多いかもしれないが、九州工業大学から夜宮公園一帯は『住みよいまち戸畑区の象徴的エリア』であると同時に、北九州が誇る文教地区でもある。
明治45年の建築美、西日本工業倶楽部
国の重要文化財に指定されている西日本工業倶楽部(旧松本家住宅)。九州工業大学の創立者のひとりであった松本健次郎が、自らの住宅と学校の迎賓館を兼ねて建てたものです。
福岡県内では九州大学に続く理系の2トップである九工大と、前述の明治学園が、同じ地区にまとまってるのはズルくない?とお考えの方もいるかもしれないが、それは仕方ない。そもそも九工大は、1909年に北九州の財閥・安川敬一郎氏によって『明治専門学校』として開校されたものだし、明治学園も、安川敬一郎氏、松本健次郎氏親子により創設されたものなのだから。さらに、旧松本家住宅は健次郎氏の住まいであり、明治学園前の通りに立ち並ぶ“松の木"は、安川財閥が創った教育施設と旧私邸等を分けるために植えられたというのだから……スケールが違うというか、優雅極まりない。
112年の歴史を誇る国立大学。
東京帝国大学(現在の東京大学)の総長を務めた山川健次郎氏に協力いただき、安川財閥の創始者である安川敬一郎氏により、1909年に明治専門学校として開校された歴史と伝統のある国立大学です。
イチョウでもケヤキでもなく松ですよ、松!松といえば、ずっとずっと昔から日本の景勝地を彩る主役の木だし、“正月には門松"ってことで縁起も良い。なかでも私が、これぞ“余裕力"!と唸ってしまったのが、松を傷つけないように配慮されたブロック塀だ。邪魔だからといってむやみに切り倒したりはしない。ブロック塀から突き出した松の木を見れば、この地が大切にしているものがわかるし、伝統や文化を守っていこうというゆるぎない意志すらも感じとれる。
品格とはつまりこういうことなんだろうなあ……この地で一世紀以上人々の往来を見つめてきたであろう松を見上げながら、私はまた考えるのだった。
やはり幼稚園年長のあの瞬間にタイムスリップして、両親を説教してやりたいと……そんなことだから、お宅の娘は!
心癒される広大な緑、夜宮公園
閑静な住宅街の中、豊かな樹林に囲まれた丘陵地に広がる公園。広い園内には、遊歩道や休憩所が配置され、すばらしい自然に寄り添う贅沢な地元住民の憩いの場となっています。
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※北九州市にお住まいの皆様へアンケート調査約1,000人対象当社調べ
Q.戸畑区沢見の
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